A Weak Dandy Man
荒井由実による「ミスリム」は、「来る筈のないあなた」という主題に貫かれている。
過去に関係のあった他者に対する思慕、その帰還への熱望と諦め。
「ミスリム」が名盤である由縁は、その卓越したアレンジメントだけではなく、その主題にあると思う。
これが、自らに降り懸かってくることを、ほんの数ヶ月前の私はわかっていなかった。
来ない“あなた”を思慕する影に、あなたへの憎しみがあるのは当然であって。
私はその思慕よりも憎しみに苦しめられている。
あなた、はリベラルで、左翼志向で、そして撰民思想の持ち主である。
あなた、は外側にいると勘違いしていて、中にいるということを忘れている。
私にはその矛盾を抱える許容はないので、私には諦めは訪れない。
「私のフランソワーズ」において、還るものが過去に成り下がっているのと同様(しかしそこから慰めを得ているのだが)、あなた、は過去になりそうで、私はそれを恐れているが一方でそれを熱望しているようだ。